心身症2後日、夏樹氏が平木医師から聞いた、診察初期の見立てが有る。そこには 『送ってこられた病歴、心理テストを判定した段階ですでに心身症としての条件はじゅうぶんにみたしている。 心身症の診断は、身体面、心身面での診察と、その二つの心身相関の証明という、身体的、心理的社会的判断が必要である。 身体面の診察では、本人の訴えが神経症的であっても、身体的な所見の見落としが無いように留意しなければならないが、 彼女の場合は、すでに数か所で審査を受け、さらにMRIまで施行して異常なしと言われているので、器質的疾患は否定的と確認できた。 すると「心因性疼痛障害(心身症)」という病名が浮かんできた。 問診の結果、発症時の心理社会的背景は、心因として十分すぎる要素を秘めていると考えられた。 例えば、 本人は書き慣れたミステリーを離れた二つの作品は、大変であったがそれなりの評価を受け、結果的にはストレスとならなかったと認識しているが こちらからは、作家夏樹静子のステータスを保っていくための葛藤、 枯渇してゆくエネルギーと焦り等々の心理社会的背景がすかして見えるようだった。 初回の面接で特に印象に残ったポイントは、 1.夏樹静子という作家の存在を支えきれなくなってきた。その印象として、身体を支える腰が痛み、弱化したという感じで本人は捉え、表現しているのではないか。 2.買い物をしてそれを包装してもらうかとか、信号待ちとか、僅かのまでも立ち止まっているのがつらいというのを聴き、この患者さんは絶えず走り続ける事によって狩りの安定を保ってきたのではないのだろうか、と思った。 作家としての生き方も、同じように走り続けてきたのではないか。 今休息を必要とし、身体もそれを要求している時、立ち止まることが すなわち、心身の不安定に直結してしまうタイプではないだろうか?』 とあった。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|